ワイヤレス メッシュ ネットワーキング
ワイヤレス メッシュの導入環境では、複数のAP(イーサネット接続あり/なし)がワイヤレス インターフェースを介して通信し、1つのネットワークを形成します。このAP間のワイヤレス通信をメッシュ ネットワーキングと呼びます。Merakiのメッシュ ネットワーキング機能は自動かつ自己修復型で、すべてのアクセス ポイントで使用できます。
ワイヤレス メッシュ ネットワークの設計に関する詳細記事は、こちらを参照してください。
メッシュ ネットワークの構成要素
メッシュ ネットワークでは、アクセス ポイントの状態はゲートウェイかリピータのいずれかになります。
ゲートウェイ
ゲートウェイ アクセス ポイントは有線ネットワークに直接接続され、インターネットへのアップリンクをネットワークに与えます。ゲートウェイがインターネット接続を失った場合は、近隣のゲートウェイを探して、リピータとして機能するように自動的にフェールオーバーします。このため、アクティブなワイヤレス クライアント接続が切れることはありません。
Merakiでは、起動時のDHCP要求送信時に、デバイスがリピータとゲートウェイのどちらになるかが決まります。有線ネットワークでデバイスからDHCP応答を受け取った場合は、有効なLAN接続があると想定してゲートウェイAPになります。ゲートウェイAPがLANゲートウェイ/アップストリーム ルータに到達できない場合は、APがリピータ モードにフェールオーバーします。
リピータ
リピータ アクセス ポイントは、有線ネットワークに直接接続されるのではなく、ワイヤレス メッシュ リンクを利用してインターネットに到達します。リピータは、電力があり、別のリピータまたはゲートウェイへの強力な(見通し線に遮るものがない)ワイヤレス接続がある限り、メッシュ リンクを形成します。
リピータAPにはスタティックIPアドレスを設定できないことに注意してください。これを行うと、自動的にそのデバイスがリピータではなくゲートウェイとして指定されます。
注:ゲートウェイとリピータのどちらも、ワイヤレス クライアントに対応できます。メッシュ ネットワークには複数のゲートウェイが存在でき、リピータは接続強度が最も高いゲートウェイを自動的に選択します。
注:リピータとゲートウェイの両方として機能できるのは、Cisco Meraki APだけです。ワイヤレスMXセキュリティ アプライアンス、Zシリーズ テレワーカー ゲートウェイ、サードパーティのAPは、ワイヤレス メッシュに参加できません。
リピータAPとゲートウェイAPの識別
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Wireless(ワイヤレス) > Monitor(監視) > Access Points(アクセス ポイント)に移動します。
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右側にあるレンチ アイコンをクリックし、Gateway(ゲートウェイ)オプションが選択されていることを確認します。
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ゲートウェイAPはGateway(ゲートウェイ) 列に 「(self)(セルフ)」としてリストされ、リピータAPにはネットワーク内の他のAPがリストされます(そのAPをゲートウェイとして使用していることを意味します)。
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また、APの詳細ページのLAN IPセクションを確認して、ゲートウェイAPかリピータAPかを識別することもできます。
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ゲートウェイAPにはLAN IPアドレスが表示され、IPアドレスを割り当てることができます。
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リピータAPの「LAN IP」セクションには何も表示されません。
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リピータの詳細ページには、メッシュ ゲートウェイへのルートに関する情報も表示されます。この情報はRFタブに表示されます。
Merakiメッシュ アルゴリズム
メッシュ ネットワーク構成に含まれるMerakiデバイスは、Merakiが設計した専有のルーティング プロトコルを使用して通信します。このプロトコルは、ワイヤレス メッシュ ネットワーキングに特化した設計で、ワイヤレス ネットワーク固有の特性(ノイズやマルチパス干渉によってリンクの品質が変わる、複数のホップを通ってトラフィックがルーティングされることのパフォーマンス上の影響など)が考慮されています。また、このプロトコルはチャネル オーバーヘッドを低く抑えるとともに導入しやすいよう設計されています。
メッシュの自己修復性能の一環として、各アクセス ポイントが互いを自動検出し、有線ゲートウェイまでの最善のルートを選択します。メッシュ対応のCisco Meraki APはすべて、有線接続を失った場合に自動的にメッシュを試みます。また、ゲートウェイとして接続している場合は、APをリピータからの接続に利用できます。このため一般に、リピータのあるネットワークでは、自動チャネル選択を許可することをお勧めします。
Merakiメッシュ ネットワーク内の各APはルーティング テーブルを定期的に更新して、ネットワーク ゲートウェイへの最適パスを更新します。ノード障害やルート メトリックによって最適パスが変わる場合は、既知の最善パスを通ってトラフィックが流れます。Cisco Merakiネットワーク内のデバイス間で送信されるデータ トラフィックは、AES(Advanced Encryption Standard)アルゴリズムを使用して暗号化されます。
メッシュ ゲートウェイに障害が発生した場合や、より良いルーティング メトリック(メトリックが低いほど良いルート)を持つ新しいメッシュ ゲートウェイが出現した場合は、新しいトラフィック フローがすべてこの新しいメッシュ ゲートウェイにルーティングされます。所定のメッシュ ゲートウェイへの現行ルートは、ネットワーク状況に合わせて時間とともに変わる可能性がります。
APによるメッシュの決定方法
APは起動するとまず、有線インターフェースを介してIPアドレスの取得を試みます。APがIPアドレスを取得できなかった場合は、メッシュ モードに入り、ゲートウェイを探し始めます。メッシュ モードになっていても、APは有線インターフェースのDHCPを使用してIPアドレスの要求を続けます。
APがIPアドレスを取得した場合は、ゲートウェイ モードに入り、メッシュ プローブのブロードキャストを開始します。
メッシュ プローブとは
各Meraki APは、リンク プローブ パケット(メッシュ プローブと呼ばれる)をさまざまなビット レートとサイズで送信します。これらのパケットはブロードキャスト フレームとして送信されるため、受信ステーションからのACKフレームは不要です。どちらの周波数帯(2.4 /5GHz)でも、データレートの異なる4種類のプローブが15秒のバッチで送信されます。すべてのAPはメッシュ プローブをリスンし、正しく受信したメッシュ プローブの数に応じて、ダッシュボードに表示されるリンク品質のメトリックを計算します。
APによるゲートウェイの選択方法
APはメッシュ モードに入ると、すべてのチャネルをスキャンして、すべてのネイバーから情報を収集します。有効なネイバー(ネットワーク内のAPまたはMeraki AP)が見つかると、そのチャネルにアクセスします。設定済みチャネルに有効なネイバーがある場合は、設定済みチャネルが優先されます。どのチャネルにも有効なネイバーがない場合は、設定済みチャネルに留まります。
リピータAPはスキャン結果に基づいて、検出されたすべてのゲートウェイと、それらに対応するリンク品質メトリックのテーブルを作成します。さらに、ホップの数も考慮され、ホップ数の少ないゲートウェイが優先されます。APは近隣のAPをすべてリスンして、リンク品質とホップ数に基づいて最終的なルートを決定します。
メッシュに使用する周波数帯は選択できませんが、チャネル選択を手動で調整して、APに目的の動作を指示することは可能です。この方法については、メッシュ ネットワークでのチャネルの手動変更に関する記事を参照してください。2.4Ghzとは対照的に、5Ghzでは2つのAPがメッシュを組むようにするには、これらのAPを同じ5Ghzチャネルに設定します(ただし、2.4Ghzチャネルは別々に設定します)。なお、メッシュ用の周波数帯を特に割り当てることはできませんが、5Ghz帯のみを使用するようにSSIDが設定されていない限り、どちらの周波数帯もクライアントに対応できます。
ネットワーク外のMeraki APとメッシュを組む場合は、リピータがMerakiダッシュボードにアクセスします。このメッシュ接続を使用してクライアント トラフィックが送信されることはありません。リピータはダッシュボードにアクセスして、設定の更新を確認できます。
リピータが新しいゲートウェイを探すタイミング
リピータは、次のいずれかの場合にAPを探し始めます。
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ゲートウェイがダウンした場合:ゲートウェイに到達できない状態が3分間続くと、そのゲートウェイはダウン状態と見なされます。ゲートウェイがダウン状態と見なされると、APは直ちに新しいゲートウェイのスキャンを開始します。全周波数帯(2.4GHzと5GHzを含む)がスキャンされ、メトリックに基づいて利用可能な最善のゲートウェイが選択されます。設定済みのスタティック チャネルは優先度が高くなります。
APがアップストリーム ゲートウェイからARPを受信した場合は、メッシュ モードにはなりません。
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リピータがより適切なゲートウェイを見つけた場合:リピータは、より適切なゲートウェイを求めて使用中のチャネルを絶えず評価しますが、各APは15秒間隔でメッシュ情報を送信します。よりリンク品質メトリックの高いAPをリピータが1つでも見つけると、そのAPは新しいゲートウェイに移行します。
リピータがゲートウェイを変更する方法
リピータがゲートウェイを変更する場合は一般に、既存のトラフィック フローを検討する必要があり、リピータは新しいゲートウェイによってパフォーマンスが落ちないようにする必要があります。データ フローのシームレスな転送と良好なユーザ エクスペリエンスを確保するため、リピータはすぐにはトラフィック フローを移行しません。既存のトラフィック フローは前のルートを5秒間使用してから、新しいゲートウェイを使用して新しいルートに転送します。
メッシュがスループットに及ぼす影響
ワイヤレス通信の半二重特性と、リピータAPを通る信号を次のホップに再送信する必要があるため、リピータを使用するとスループットが大幅に低下します。ワイヤレス スループットに影響を及ぼす要因は多数ありますが、メッシュを加えるとスループットが約50%低下する可能性があり、ゲートウェイに到達するまでに経由しなければならない後続の各リピータにも低下の影響が及ぶと想定しておいてください。そのため、クライアントとゲートウェイ間のホップ数を最小限にすることをお勧めします。
メッシュのモニタリング
メッシュのモニタリング ツールは、各APの詳細ページの最下部にあります。このツールを利用するには、Wireless(ワイヤレス) > Monitor(監視) > Access Points(アクセス ポイント)に移動し、アクセス ポイントをクリックします。
下記の画像は、リピータとして動作しているAPの例です。右上隅にあるタイム セレクタは、UIのメッシュ モニタリング セクションに表示されるすべてのUI要素のタイムフレームを調整するものです。
タイム セレクタを使用して、次のいずれかを選択できます。
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2時間
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1日
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1週間
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1カ月
メッシュ ルート
ルート テーブルには、時間の経過とともにさまざまなフローで使用されたルートが表示されます。新しいルートが選択されると、そのルートがルート テーブルに追加されます。選択した期間にわたるルートごとのトラフィック総量は、「Usage(使用量)」列に表示されます。このテーブルには、損失時間とパケット伝送時間を組み合わせたメトリックも表示されます。また、この特定のメッシュ ルートのキャパシティを測定できるように、「Avg.Mbps(平均Mbps)」スループット値も表示されます。
メッシュ ネイバー
APの詳細ページのRFタブにある「Mesh Neighbors(メッシュ ネイバー)」テーブルには、自動検出されたAPが表示されます。リンク品質は、信号強度と各方向でのパケット伝送成功率を考慮したメトリックです。強度の高いリンクにするには、70%以上の信号品質が推奨されます。